株式会社リコーは、宇宙空間を360度撮影できる小型全天球カメラを宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で開発し、8月末に発表会を開きました。カメラは、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」の船外から、360度にわたって静止画と動画を撮影し、地上に送信される予定。打ち上げが予定される無人補給機「こうのとり」8号機に搭載され、「きぼう」に届けられます。

リコーによると、民生品の360度カメラが宇宙船外で全天球の撮影を行うのは、国内初。宇宙という過酷な環境での撮影から得た知見を生かし、360度カメラを使ったさらなる宇宙開発への貢献や、社会インフラの整備など地上での技術発展にも期待が持てそうです。

地球、月、太陽・・・宇宙を360度ぐるり。天文ファンに楽しさと感動を

リコーとJAXAとの共同開発で生まれた小型全天球カメラのサンプル

画像: 小型衛星光通信実験装置「SOLISS」(JAXA提供)

小型衛星光通信実験装置「SOLISS」(JAXA提供)

今回、ISSに送られるカメラは市販品の「RICOH THETA S」をベースにしました。「RICOH THETA S」の大きさは、幅44㍉、高さ130㍉、奥行き22.9㍉。JAXAとソニーコンピュータサイエンス研究所が、将来の衛星間や地上との大容量リアルタイムデータ通信を目的に共同開発した小型衛星光通信実験装置「SOLISS」の横に取り付けられます。

カメラの主な役割は「SOLISS」の可動部の動作確認ですが、JAXA宇宙探査イノベーションハブの澤田弘崇・主任研究員は「全天球カメラからは地球が常に見られるし、タイミング次第では月や太陽、流れ星も映るかもしれない。見ていて楽しく、感動するような写真や映像が撮れると期待しています」と話します。カメラの画像と映像は「きぼう」での実験開始後、1週間以内に地球に届く予定です。360度の画像と映像はJAXAデジタルアーカイブス(http://jda.jaxa.jp/)で無料公開され、まるで宇宙船外にいるかのような体験ができそうです。

画像: RICOH×JAXAVR ver youtu.be

RICOH×JAXAVR ver

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シータは2013年、世界に先駆けて生み出された360度カメラです。小惑星リュウグウを探査中の「はやぶさ2」で使うカメラの開発も手がけてきた澤田主任研究員は、早くからシータに注目しており、2015年、リコーに宇宙用の360度カメラの共同開発を持ちかけました。「もし、(2014年に打ち上げられた)はやぶさ2にシータを搭載していたら、面白い映像が撮れたのにと思っていました。『シータを宇宙で使いたい』と押しかけるような形で、リコーさんに相談しました」と振り返ります。

宇宙事業の経験がないリコーの担当部門は当初、断ろうとしたそうです。しかし、リコー執行役員の大谷渉・Smart Vision(SV)事業本部長が「せっかくJAXAが言っているならやろう」と背中を押し、開発がスタートしました。カメラは市販品がベースですが、宇宙空間の温度や放射線、打ち上げ時の振動に耐えるため、ボディーにはアルミニウム合金を使用。内蔵メモリーの容量も市販品の8GBから32GBに増やしました。

開発で最も難しかったのが、宇宙空間の放射線への対応です。市販品で実験したところ、半年から1年間は宇宙空間にも耐えられることが分かりました。ただ、開発を担当したSV事業本部の吉田彰宏さんは「ある回路が少し弱いという評価を受けました。その部分の解析に時間がかかり、ハードウェアとファームウェアのどちらで対策するかが悩ましかった。長い時間がかかって、放射線に強いファーム制御を採用するに至りました」と話します。

「疑似的なタイムマシン」 時空を超えた体験をVRで提供

画像: 発表会ではリコーとJAXAの開発担当者らによる座談会も行われた。左からJAXAの川崎一義氏、澤田弘崇氏、リコーの山下良則氏、大谷渉氏

発表会ではリコーとJAXAの開発担当者らによる座談会も行われた。左からJAXAの川崎一義氏、澤田弘崇氏、リコーの山下良則氏、大谷渉氏

JAXAは宇宙開発において、民間企業との共同研究を進めています。建設大手の鹿島とは月面基地を建てるための遠隔施工技術を、玩具大手タカラトミーとは小型ロボットの開発を手がけました。今回、宇宙へ飛び立つシータも、宇宙開発の一翼を担うことになります。JAXA宇宙探査イノベーションハブの川崎一義・副ハブ長は「人工衛星に不具合があるときや宇宙ステーションに隕石が当たったとき、画像を確認できる360度カメラは使い勝手がいい。また、思いがけない天体現象が撮影できる可能性もあり、宇宙探査の中でも有益な技術です」と言います。

シータは一般ユーザーが楽しむだけで無く、不動産業界が部屋を360度画像で見渡せるサービスとして活用するなど、産業用としても広がっています。リコーの大谷SV事業本部長は、宇宙に飛び出すシータを「疑似的なタイムマシン」と表現。「宇宙は普通の人が行くことができない究極の場所ですが、360度カメラを使ったVR(仮想現実)によって、時空を超えて体験できる。将来は月の上にシータを持っていってもらい、自分があたかも月面を歩いたかのような体験をしてみたい」と夢を膨らませました。

リコーの山下良則社長は米国赴任中、天体望遠鏡を持って砂漠に行ったほどの天文ファン。JAXAとのプロジェクトに「興奮を抑えきれない」と笑顔を浮かべます。「360度カメラの可能性は宇宙だけで無く、地上にも広がります。例えば、交通インフラへの活用、工場の製造工程の管理、自動運転や街を見守る目となって、安全・安心な社会を支えることも可能になります。社会インフラの課題解決は1社だけではできません。JAXAとのプロジェクトで、我々の信頼度は相当高まると期待しています」。大きな希望を抱きながら、シータは宇宙へと飛び立ちます。

過酷な現場で高まるニーズ。宇宙のVRから広げるBtoBビジネス

画像: リコーの大谷渉・SV事業本部長

リコーの大谷渉・SV事業本部長

発表会終了後、リコーの大谷SV事業本部長に、JAXAとのプロジェクトを、実際のビジネスにどのように活用するのか、改めて取材しました。

――シータはなぜJAXAに評価されたのですか。

今回のお話をいただいた2015年当時、民生品で簡単に360度画像が撮れるカメラは、シータ以外にほぼありませんでした。JAXAの澤田さんは360度画像をぜひ撮りたいという強い意欲を持っていました。

――シータは現在、BtoBの領域でどのように活用されていますか。

不動産関係が80%くらいだと思いますが、建設関係など他の用途でも使われるようになってきました。ほこりがひどかったり、熱環境が厳しかったりするなど、過酷な現場でシータを使いたいという要望を多くいただいています。

――宇宙で得た知見を、シータの開発や改善にどのように役立てますか。

宇宙というのは魅力的なコンテンツでした。惑星の探査車(ローバー)への搭載を期待したいし、ハードウェアとデータ配信を一体化したサービスも宇宙で展開できそうです。産業の現場を映像に残すのは重要で、シータが今後、地上でも社会インフラの一翼を担うと思っています。

――例えば、過酷な環境として、原発の廃炉作業への活用も想定されますか。

期待感はあります。実は福島第一原発事故の後、作業に使えないかという話はありました。破壊されつくし、誰も撮影できない環境の中、何があったかを残しておきたい。しかし、放射線環境が宇宙空間よりずっと厳しく、ハードウェアが壊れてしまうということで、対応できませんでした。将来はそういうところに役立ちたい。今回のプロジェクトでも放射線への対応は大きな課題になりましたから、参考になると思います。

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